簡単に製作できそうに思えるノーブルタイかも知れませんが、完成までには、実に20以上の製作工程を必要とし、
その中には数日間要するものや職人技とも言える熟練度を要する工程が含まれています。
(布ヴァージョンの場合)
誕生以来現代まで、生地は針と糸を用いて縫い合わされて使用されてきており、張り合わせに使用する接着剤の
開発と接着技術がまだ確立されていないのが現状です。
また、成型した際に気泡やシワが発生しないよう成型後の形状を想定して生地貼りの密度を変えます。
天然皮革は生物から得られた副産物です。人工樹脂材などと違い部位により硬さや繊維質の流れが異なり、
温度、湿度の僅かな差にも影響を受け予測できない形状変異をおこします。
そのため、ノーブルタイ製作時には最良の条件下で作業を開始します。
コバ全体が曲面で構成されている為にカッティングには高い技術力を必要とします。
カッターナイフのわずかなミスでそれまでの工程が総て無駄になります。
数日間、この作業をしませんと指先の感触が鈍ってしまうほど微妙な技術です。
弊社の場合、コア部分に使用する牛ヌメ皮革は総て一頭買いをしていますが、不規則な変形等を及ぼす疑いのある端部の原革はノーブルタイの製作に不向きなため使用しません。一頭分の皮革の中でも使用できる部位は
およそ70〜80%程度です。また繊維質を縦横斜めに見極めながら原型模りをしなければなりません。
天然皮革はそのままにしておきますと元の形状に戻ろうとする作用が働き、しかも部位により変形度合いが
違います。まずは一度目の成形後、低湿度のもとで緩やかに数日間乾燥させますが、その間に若干の歪みが
生じますので、微調整を数度繰り返し、形状が安定してから最後の床面(裏側)張り合わせ本成型に入ります。